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放射能検査の実態

福島第一原子力発電所事故によりさまざまな種類の放射性物質が拡散しました。
現在も東京電力発表のセシウム放出量は大気中に毎時1,000万ベクレル、太平洋には1日あたり20億ベクレルです。
原発事故由来のさまざまな放射性物質において比較的測定が用意なγ線を放出する放射性核種はセシウム(Cs-134及びCs-137)です。
Cs-134の半減期は約2年ですがCs-137の半減期は約30年と長く300年経過しても完全には消えません。
セシウムの定量は出来るだけ長期にわたり継続し、検証する事が大切です。
そのためには、何よりも信頼性の高い測定の数値をわれわれ市民で共有する事が大切です。

現状の国内における放射能検査体制ですが簡易検査と精密検査の2つがありますので使い分けが必要です。
NaI(TI)シンチレーション式検出器は『食品中の放射性セシウムスクリーニグ法』で国が定めるスクリーニグ検査で有効な測定器は検出下限値25Bq/kgと規定されています。
(スペクトルでピークとして明確にCs-134、Cs-137等を検出する事が出来る限界値)

以前からこの事を何度も書いてきましたが現状ではまったく信憑性がない数値が一人歩きをしています。
何人もの方々からご連絡を頂きましたので差し障りがない範囲で頂いた内容を原文にて以下に記載します。

以下、差し障りがない範囲で原文で記載します。

特定非営利活動法人北海道放射能分析センター
http://housyanou-bunseki.com/%e6%94%be%e5%b0%84%e8%83%bd%e6%b8%ac%e5%ae%9a%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%83%93%e3%82%b9/
十勝地域の学校給食センターなどに独自の測定器を持っている自治体は別として、
持たない自治体の幾つかがこの測定所に検査を出しています。※例え、仮にサンプルの密度が1.0g/cm3程度のものであったとしても、15分間の測定で、このような検出下限値が得られよう筈もなく、見過ごし難いものがあります。

新得町の学校給食センターがここに依頼し、町のホームページ上で公表されている数値は以下のように
なっています。
http://www.shintoku-town.jp/files/material/261016kutuhousyasenn.pdf

検査品目 りんご
産地 青森県

I-131  検出せず (検出限界値 2.63ベクレル)
Cs-134 検出せず (同 2.42ベクレル)
Cs-137 検出せず (同 2.81ベクレル)

品目がリンゴで、密度は1に近いであろう事から、多分15分間測定
の結果として出している可能性が高いと察せられます。

これを一般の住民が見れば、2.5ベクレル以下で不検出と受け止める事でしょう。
しかし、この検出限界値は基本的に無意味であって、事実誤認を起こさせるもの以外ではないと言えるであろうと思います。

*引用終わり

また、違う方から下記の測定検査の信憑性を問われました。

http://www.project-food.net/

この問題の難しいところはNaI(TI)を販売するメーカーがカタログスペック上に限界値を記載しそれを鵜呑みにしている方が多いところです。
しかもメーカーの記載は間違いではありません。
カタログスペックに1Bq/kg以下の記載があってもあくまでもCs-137単一線源の理論値であると言う事です。
K40などが検体に含まれる場合は限界値が高くなる事もたいがい注意書きがされています。
アイソトープ協会認定機種のNaI(TI)はSc-137/1,000Bq/kgの体積線源で校正を行っております。
つまり検体の多くに含まれるK40などを考慮に入れていません。

現在の食品のセシウム基準値は飲料水/10Bq/kg、牛乳、乳児用食品/50Bq/kg、一般食品/100Bq/kg
なっています。
NaI(TI)では飲料水の基準値である10Bq/kgの検査には適していませんが現状では数ベクレルの数値を表示して不検出などの表示を多く見かけます。

事故前から測定を行っている専門機関ではそれはわかっています。
同位体研究所で下記の記述があります。

簡易計測と精密計測をどのように使い分けるか。
それでは、NaIシンチレーション検出器とゲルマニウム半導体検出器をどのように使い分ける事ができるでしょうか。
もし放射性セシウムの含有が非常に低い、またはほとんどない食品の場合であればスクリーニング検査として測定を行い50 Bq/kgを超える値があるかを検証します。 NaIシンチレーション検出器の定量下限はおおよそ20~50 Bq/kg程度(測定時間を長くとると10 Bq/kg程度まで下がる)ですので、規制値100Bq/kgに対して,50%の水準である50 Bq/kgを超えるかどうかを測定できます。

定量下限50 Bq/kgのNaIシンチレーション検出器で、「検出なし」であれば、規制値への適合は確保されると考えられます。 もしNaIシンチレーション検出器で規制値の50%(つまり一般食品で50 Bq/kg)を超える検出があれば、ゲルマニウム半導体検出器による確定測定を実施し、含有量を確定する事が妥当となります。
牛乳・乳児用食品、飲料水については、ゲルマニウム半導体検出器での測定が必要一般食品については、新規制後もNaIシンチレーション検出器での測定をスクリーニングとして使用は可能です。 
しかし飲料水については、ゲルマニウム半導体検出器以外では、検査は困難です。 
また乳児用食品・牛乳の場合、規制値の50%が25 Bq/kgとNaIシンチレーション検出器の定量下限付近となる事から、やはりゲルマニウム半導体検出器での測定が望ましいと考えられます。
新規制の導入により、一般食品は、NaIシンチレーション検出器によるスクリーニング検査とゲルマニウム半導体検出器による確定検査という構成が一般的となるでしょう。 また牛乳・乳児食品・飲料水については、ゲルマニウム半導体検出装置による測定が必要となります。
http://www.radio-isotope.jp/tech/regulatory_limit.html
*引用終わり

つくば分析センターなどが設定しているNaIの測定下限値は下記のとうりです。
NaI(標準コース)測定下限値 20Bq/kg

NaI(精密コース)測定下限値 10Bq/kg

http://www.tacnet.jp/radiation/

測定器の性能は検出器だけで決まるものではなく検出効率、遮蔽、MCAの性能、ノイズ対策など総合的なバランスにより決まります。
特にMCAはデジタルのものでは原理的に微分非直線性を保証出来ませんのでゲルマであっても性能が悪いMCAを使用しているものは検出下限値も高いです。
この微分非直線性が良くないと長時間測定は出来ません。
微量放射能測定の可能性について

信頼性の高い測定の数値をわれわれ市民で共有する事が大切です。